福袋の中身は半端モノ

 年始に福袋を買った方もたくさん居られるでしょうね。
 衣料品の福袋を提供する側としては、全部在庫品でまかなってほしいですが、意に反して、わざわざ福袋用に作り込んだ商品の割合は、年々増えているのではないでしょうか。

 毎年、ある百貨店の福袋の手配をしています。百貨店に卸しているベンダーが「こんな商品をこの値段で…」と、百貨店の意向に沿った希望を出してきます。ちょっとお得感のあるスタンダードなもので、この数年、値段だけが厳しくなって、内容は代り映えがしない傾向にあります。

 付け加えておきますが、世間全体の傾向ではなく、私が依頼されるモノが固定化されてきた、と言う意味です。

 普通の店頭商品は1型3色2サイズ展開などのバリエーションがあって、仮に6通りあるとすれば、それぞれの生産数を推測し、最終的には6通りが同時期に売り切れることを願います。1色だけ1サイズだけ残ってしまうと、売り場に置きづらくなるからです。

 それに対して福袋は、同じ商品の色違いばかりだとつまらないので、大まかな商品群を決めたら後はバリエーションが必要になります。友達同士で一緒に同じ売り場で福袋を買って、同じモノだったり色違いだったりすると興ざめします。というか、ほとんど殺意が湧くというか、それはそれは悲惨な気持になります。

 そこで例えばセーターなどのトップスと小物のセットだと、クルーネックもあればハイネックもVネックも用意しなければなりません。カーディガンだったりベストだったり、色もバラバラの多色展開を希望されます。小物もマフラーがセットだったり、帽子だったり手袋だったり。ちょっと違いだけど仲間だよ、みたいな感じを目指します。そしてMサイズが何袋分、Lサイズが何袋分と、サイズはきっちり用意します。

 ところが、こんな商品は工場ではとても作り難いのです。いわゆる小ロット生産になるため、海外では更に嫌われます。ちょこちょこちまちま作るのは生産性が悪いと、工場からはコストアップを要求され、ベンダーからは「福袋なんで、一つご協力を」と、値下げを要求され、間に入るこっちの口銭も確実に少ないです。はっきり言って、付き合い商売でしかありません。

 ここで1色1サイズ少しだけ残っちゃった半端モノが転がっていればお互い万々歳なのですが、そういったものは差色*1だけが残っていたりしますから、「残り物臭くてダメ」とか言われます。デザインが凝ったものは「相手を選ぶからダメ」とはじかれ、上手い具合に在庫が転がっていることはほとんどありません。なので、工場に頭を下げて作ってもらうしかありません。

 在庫糸を処分してあげるから安くしてm(_ _)m
 サンプルを混ぜてくれていいから、後は作ってm(_ _)m
 在庫商品も少しだったら混ぜていいからm(_ _)m

 こんなセリフになります。

 自分が残した糸を、さも使ってあげますわ的に恩着せがましく言ったり、作らしておいてボツにしたサンプルの有効活用してあげますわ的にサンプル代をウヤムヤにしたり、それでも全部綺麗に引き受けるわけでもなく、コレいらない、アレいらないと食い散らかして、良いとこ取りをして、決してクリアランスというわけにはいきません。

 福袋のために半端モノをわざわざ作るのは、工場に迷惑かけるので本当に嫌なのですが、こうやってメーカーが迷惑に思う程、買う側にとっては「とってもお買い得」であることは間違いありません。好きか嫌いかという主観は別にして、金額的には断然お得です。払った値段よりモノが安いということは絶対にないと思います。古かったり新しかったりもしますが、そこは運試しなので諦めて下さい。

 私が関わった福袋が、もしかしたら貴女の家に行ってるかもしれませんね。満足していただけたでしょうか?

 正直、福袋は完売して欲しいと願っています。何があっても返品して欲しくないからです。あんな半端モノを返品されたら、他に売るところがありません。来年また出せばいい話ではありますが、通常ロスとしての在庫ではなく、わざわざ作ってしまった半端モノの在庫を抱えるなんて、泣くに泣けない気持がします。

 業界で言われる「半端モノ」と言う言葉は、色サイズ展開が揃っていないことで、それは決して、中途半端な出来栄えの商品という意味ではありません。福袋は断然お買い得な良い商品が入ってます!
 私は絶対買いませんけどね。

*1:さしいろ。色展開の中で、売れ行きよりも視覚的効果を狙った色。