服の最終着地点はみんなの箪笥かメーカーの倉庫

 Banyouさんの『万有引力吸着セレクション』に引き寄せられて、さらに飛んでみたところにあったのがコレ。ナイスです。

何年も前から「なんで〜」「どーなってんのお〜」と思っていることの一つが、日本のお店にあふれる商品の多さです。まーホント、どこに行っても商品があふれてますよね。店も多いし、一つの店にある商品も多い。「あきらかに」国全体として必要な量よりも多いモノがこの国にはあると思う。ちょっと多い、という程度ではない。必要なモノの10倍以上のものが存在している気がする。

そういった「最終的に不要なもの」はいったい「最終的にどこに行ってしまうのか?」というのがすごく気になる。
  『あの服はどこへ行く』By Chikirinの日記

 テレビで工場見学なんか見ていると、年間生産量を聞いて驚く商品があります。年間消費量がそんなにあるのか!という驚きだったり、完全に年間生産量が年間消費量を上回っているだろう?という疑問だったり。

服って・・・多すぎると思いません??

そもそも、既に自宅に「着もしないモノも含め、服多すぎ」という個人はたくさんいるでしょう。にもかかわらず、店にも服があふれている。高級ブティックからデパート、そして地元の商店街にスーパーの衣服売り場。通販のカタログにネット販売も多い。

どうですか?あの服って、スーパーの衣服売り場に並んでいるあの大量の洋服って、最終的に「誰かが買っている」と思います?

とても思えない量ですよね。

じゃあいったいどうなっているのか????

 ムダに生産数が多すぎる筆頭のイトヘン業界。内部にいてもそう思います。
 年間消費量1億枚と言われているあるアイテムは、私がいたその会社だけで年間約4000万枚生産されていました。どんぐりな会社3社がそのアイテムのシェアのトップになろうとしていましたから、単純計算しても3社で2000万枚余っています。それ以外に小さな会社がバラバラ生産していましたから、残らないわけがありません。

まあたぶん、ある程度は焼いているでしょうね。ある程度はバーゲンで捌く。スーパーで売れなかった服が、田舎の「服屋さん」に流れている部分も一部あるでしょう。でも、それにしてもすごい量です。あの世の中にあふれる服の末路を知りたい。気になる。知りたい。気になっちゃって気になっちゃって夜も眠れない。

 焼くっていうのは現実にはそんなにありません。イメージを保っているブランドで焼くイメージが強いのですが、元々は世に出せない不良品が工業から横流しされたら困るので、それらは焼却処分していたことはありました。高級ブランドの実態はほとんど知りませんが、残りモノだから焼くのはないような気がします。超一流ブランド商品ってそんなに生産していないっていうか、シーズン性のあるものは受注発注生産に近いのではないかと思います。

 スーパーに一度入った商品は、よっぽどのことがない限りメーカーに返品されません。バーゲンはワッと持っていってワッと持って帰りますが、プロパーと呼ばれる商品は売り切ってしまいます。たまに発注担当者がボンクラだったらよっぽどのことがしょっちゅう起こりますが、基本的にアレだけの服が全部消費されているのです。残り物に見えないように売り場で工夫したり値下げをしたり努力して、消費者が市場で目にした服の大半は各家庭の箪笥に収まっているのです。シーズンの切り替え時期に在庫入れ替えの契約をしている場合はメーカーに返品されますし、百貨店や小売は簡単に返品してきますが、それはたらい回し。

 流通のどこかで、1枚2枚余ったものをええ〜〜〜い捨てちゃえってのはロス分としてあるでしょうから、その内だんだんなくってしまい、メーカーは10枚20枚の残りだったら売り物にならないので適当に処分します。私はまあそんな商品で生活したり・・・・以下自粛。

 そんなわけで余剰在庫はメーカーの倉庫にあるのですが、あっちのバーゲンに出しこっちのバーゲンに出し、自社の優待セールに出し、おまけをつけて別の売り方を考えたり化粧直ししたり必死です。以前は量り売り業者が買い取って海外に送ることもありましたが、そんな業者を常連にしているメーカーの先は長くないでしょう。残りを二束三文で叩き売るほど利益はありません。安物の服屋だからこそ、シーズン末に在庫が残らないように凌ぎを削っているのです。売れる商品をたくさん作るよりも、残らない商品作りに力を入れた企業がいわゆる勝ち組として残っていきます。

 業界では、生産数量の予測をする係りのマーチャンダイザーが精神的に追い詰められて、日々壊れていく姿が頻繁に見られます。デザイナーも決算の棚下ろしに参加させられ、倉庫の奥を担当させられます。倉庫の奥には不良在庫が眠っていて、自分が関わった商品が大量にいつまでもそこにあるのを見ると吐きそうになります。返品されたものよりも、世の中に出ていない在庫の方が多いのではないでしょうか。作りすぎて思った以上売れなかったとかで倉庫に眠ったままです。倉庫責任者に「この商品のせいで倉庫が狭い」と嫌味を言われても一言も言い返せませんし、それはもう凹みます。そうやって在庫を残すと怖い目に合うぞ!と脅されながら、メーカーはがんばっているのです。ですからせめて、簡単に返品しないでください、販売予測は的確に!!!と、バイヤー様にはお願いしたいです。

 何年かに一度、倉庫がいよいよ手狭になって、にっちもさっちも行かなくなった数年越しの在庫を、廃棄処分のトラックが持って行ってくれる時があります。肩の荷が下りた爽快な気分になりますが、そうそう潔く簡単に処分させてくれる会社はありません。企業生き残りのためには必死なのです。